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サナルっ子ヴォイス

『人生おわりじゃない。次に挽回できる』

教室からの雪辱

「帰ってくるなり部屋にこもって、布団をかぶりました。無理矢理目を閉じても眠れない。サナルの卒業パーティーに行く気もしませんでした。ただ悔しい、その気持ちが心の中をぐるぐる回っていました」

 豊君は三年前を振り返り、語ってくれた。
その日。公立高校合格発表当日、豊君は打ちひしがれていた。不合格だったのだ。合格間違いなしと思っていた生徒だけに、私の驚きは大きかった。だからというわけではないが、その時の姿を今でも覚えている。励ましに来る友人に薄っぺらな笑顔を貼りつけて応じる。だが、友人が去ると虚勢を張る余裕もなく目を伏せてその場を去ろうとしていた。いたたまれなくて、なにか声を掛けてやりたくて、私は彼の肩に腕を回した。三年後があるじゃないか、人生これで終わりじゃない、次に挽回するんだ、私は懸命に彼に声を掛けた。ほんの一瞬目を合わせた後、視線を地に落としたまま彼はただ頷くばかり。自分の声が彼に届いているか、少々不安だった。

 結局、彼とはそれっきりだった。
 「高校二年の終わり、サナルに高校部ができることを知りました。何の躊躇もなく入学を決めました。二年間ずっと頭の隅に眠っていた言葉を思い出したから。『人生おわりじゃない。次に挽回できる』っていうサナルの先生のあの言葉を」

 豊君は高校部の授業初日に一番に現れた。久方ぶりの対面。以前教えていた生徒なだけに、会話が弾んだ。話題は現在の学校成績、中学の時の成績、授業中の彼、そして高校受験へと移っていく。「今年、絶対雪辱を果たそうな」豊君はこくりと頷いて「あんな悔しさはもう二度と味わいたくないです」とぽつり。ああ、彼はやるだろうな、その時確信した。
 実際豊君はよく頑張った。入学当初は正直、勉強してなかったな、と思っていたが、必死に我々のカリキュラムについてきた。テストでは常に上位に食い込む。次第に、模試でも上位に顔を出すようになってきた。「大学受験は甘くないですね」なんてぼやく時もあったが、決して手を抜いたり、投げ出したりすることはなかった。

 「不安がないわけではありませんでした。現代文が苦手で。高校入試に失敗したのも国語が原因。悩みの種でした。でも、弱点は弱点。自分の得意分野を徹底的に鍛えよう、それを武器として弱点を補って余りあるものにしよう、サナルの先生との話で、そう方針を決めたんです。それから吹っ切れて勉強できました」

 センター試験当日、応援に大学の校門の前に立った。歩いてくる豊君が我々を見ると、一瞬たじろいだ後、私の前に立った。「正直言って、応援に立つサナルの先生には足が引けました。『マジかよ』って感じでしたよ。高校入試の時は嬉しかったんですが・・・でも自然に足が動いて、気づいたら先生と握手していました。」

 豊君の自己採点は志望大学のボーダーラインすれすれ。それでも彼は果敢に挑戦していった。
 三月、受験を終えた彼は、新たな悩みを抱えて私の前に立っている。
 「受験した大学全部に合格しちゃって。どこに入学すればいいか悩んでいるんですよ。先生、どこにすればいいと思いますか?」全く羨ましい悩みだ。

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