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科目別対策|小論文


名大入試分析(2022)小論文

出題傾向

【試験時間】90分
【難易度】
【特徴】課題文を読んで、設問に答える形式の小論文。課題文の分量がとても多い。

全体分析

例年、9000~10000字程度の課題文を読み、その文章に関連した2~3題の設問に答える形で、合わせて1000~1200字程度の論述をするスタイルの問題が出題されます。記述する量は一般的ですが、課題文の分量が多く、書かれている内容のレベルが極めて高いので、読みこなすのに苦労するでしょう。

2022年は、猪木武徳『自由と秩序―競争社会の二つの顔』(中公文庫 2015)から、「一元的な経済競争システムの危険性と、その競争における適正さやバランスを、現代民主主義の下で、どのように保てばよいのか」というテーマの文章が出題されました。
このように文章の骨子(要点)を言われても、直感的に理解しにくいのではないでしょうか。例年の課題文もハイレベルですが、この2022年は、特にレベルが高い内容でした。内容のまとまりを適切に捉えながら、文章の構造を理解して読みこなさないと、文章の論旨を見失ってしまう可能性が高い文章だといえます。

また、設問は3題でした。問1は、下線部における筆者の考えを240字以内で記述する設問、問2は、下線部について筆者が考える理由を300字以内で記述する設問、問3は、競争における「ゆがみ」や不正の具体例を取り上げ、その競争で適正さやバランスを保つためにはどうすればよいかという、課題文全体のテーマに関して500字以上600字以内で論じる設問でした。問3で、どのような具体例を取り上げればよいかが最も難しいポイントだったのではないかと思われます。

設問は、課題文の内容に即して作成されているので、問1、問2、問3の順に取り組むことが望ましいでしょう。この3つの設問の中では問3が最も難しいのですが、問1、問2に対する考察が、問3の考察の下地になっていますので、設問順に考えていくのが得策です。

時間配分

小論文全体で90分ですが、そのなかで、読解と記述に要する時間を適切に振り分ける必要があります。また、記述に要する時間のうちには、どのような骨子(要点)で論述するかのような、内容を練る時間も必要です。
大まかな配分としては、課題文を読む時間として20分、答案を練る時間として3題合わせて40分、実際に答案を書く時間として3題合わせて30分、というように考えればよいでしょう。

対策と学習法

①読解力をつけよう
名大小論文の特徴として、まず挙げるべきは、その課題文の量と内容です。例年、9000~10000字程度の文章が課題文として出題されます。これは、共通テストで出題される評論の文章より、やや多めの分量です。さらに、扱われているテーマが比較的新しい社会問題であり、それに対する筆者の見解が明確に存在しているという、とても「歯ごたえのある」文章となっています。小論文の答案をどう書いていくかを考える前に、「強力な課題文」というハードルをどうクリアするかが対策の要です。

とにかく、文章をたくさん読みましょう。文章を読むことが習慣化していないなら、新聞のコラムや社説などから始め、大学入試問題の国語で出題された評論の文章、さらには、その出典の書籍へと手を広げ、より多くの文章に接する機会を作っていきましょう。

文章を読むときには、その文章の構造を重視して読み取るように努力しましょう。文章の構造とは、どの内容とどの内容が対立しているかとか、書かれている具体例がどのように抽象化(一般化)されているかなど、その文章の主題が、どのような形で述べられているかということです。そして、構造を理解することによって、その文章での筆者の主張を理解しましょう。課題文を読んで小論文を書くときには、「文章の構造」と「筆者の主張」の2点を把握することが重要なのです。

②知識を充実させよう
法学部の小論文なのだから、法律に関する詳しい知識が必要になるのでは? と心配に思うかもしれませんが、例年の問題を見る限り、そのような専門的な知識はほとんど必要ではありません。ただし、当然のことですが、高等学校までで学習する範囲の法律や裁判に関する知識、つまり公民の知識は必要です。それだけでなく、高等学校までで学習する社会科の学習内容全般の知識が必要になります。

2022年に出題された課題文『自由と秩序―競争社会の二つの顔』では、江戸時代の「徳川の統治」の「多元的評価システム」が「現代民主主義」の下では構築しにくいという内容が書かれていました。

この文脈を理解するうえでは、江戸時代の統治システムについての知識が必要です。公民だけでなく、地理、歴史など、広く社会科の知識が求められていると考えてよいでしょう。むしろ、高等学校までで学習する範囲の社会科の知識は完璧にしておくことが望ましいのです。

③問題意識を高めよう
高等学校までで学習する社会科全般の知識にプラスして、現在の社会情勢に目を向け、どんな社会問題があるのかを知っておくとよいでしょう。
名大小論文の設問には、例年、
  • 「過去または現在の具体的な事例を挙げ」(2018年)
  • 「現代社会において生じている問題を一つ取り上げながら」(2019年)
  • 「過去または現在の具体的な事例を挙げながら」(2020年)
  • 「現代社会における不平等の具体例を一つ取り上げながら」(2021年)
  • 「『ゆがみ』や不正が生じているとあなたが考える具体例を一つ取り上げながら」(2022年)
このような、現代社会の問題に関する具体例を取り上げて論じるという設問条件が付いてきます。この条件をクリアするためには、現在の社会情勢や社会問題についての理解が必須なのです。

しかしながら、「知識」として固める必要はありません。毎年、「時事問題」についてまとめた参考書なども出版されているので、そのようなメディアから手っ取り早く摂取することも可能ですが、そのやり方もあまりお勧めしません。なぜなら、そのような「知識」としての社会問題への認識は、表面的になりやすく、社会問題の理解に必要な、「問題意識」に欠ける恐れがあるからです。

大切なのは、どれだけ多くの社会問題について知っているかではなく、どれだけ広く社会に対する問題意識を持っているかなのです。つまり、問題意識のセンサーを広く持つ工夫をしなければならないのです。その問題意識は、最終的には設問条件にあるような「現代社会における」問題へと一般化する必要がありますが、スタート地点としては、ごく身近な社会に対する感じ方でかまわないのです。

例えば、よく行く近所のスーパーマーケットは、この10年ほど、ずっと男性の店長ばかりで、女性が店長になったのを見たことがない……のような身近な社会に関する気づきをスタート地点として、日本でなんらかの管理職になるうえで、男女差別があるのではないかという社会全般に対する問題意識に発展できればよいのです。そのような、現実に根ざした、安定感のある問題意識を数多く積み重ねていくことが重要なのです。

④記述力を身に付けよう
知識が十分身に付いて、問題意識も高まって、読解力と文章理解力にも自信が持てたとしても、600~800字とか800~1000字とかの字数制限を目にすると、「そんな長い文章が書けるのだろうか……」と気後れしてしまう人が多いのではないでしょうか。800字前後の文章の記述というのは、書き慣れていないと、大きな壁に感じてしまうものです。その対策は、一つしかありません。「書き慣れる」ことです。

小論文の記述力を身に付けるためには、日ごろから文章を書く練習をすべきなのです。もちろん、いきなり800字や1000字の文章が書けるわけではありません。短い文章を書く練習の積み重ねによって、最終的に長い文章が書けるようになるものです。まず、その第一歩が踏み出せないのでは、先に進めません。とにかく、その第一歩を踏み出しましょう。

そのためには、答案に書こうとする内容、つまり骨子(要点)を短い文でまとめる練習をお勧めします。要するに、自分が述べようとすることを短い文で書き表すことができるように練習をするのです。記述力を身に付けるうえで最も大切なのは、当たり前ですが、「書くこと」です。それに尽きるのです。だから、短い文でもかまわないので、とにかく文を書いていくことが大切です。

最もよくないのは、設問を読んで、なんとなく「だいたいこんな答案にすればよいのでは?」と思うだけで、実際にペンを持って文章を書かないことです。とにかく、自らの手によって文または文章として形にすること、それが記述力を身に付けるための王道だと認識してください。

それができるようになったら、その短い文でまとめた骨子(要点)に少しずつ肉付けしていきましょう。自分が述べようとする骨子(要点)に対して、「なぜそう考えるのか」「その考えと対立する考えは何か」「どんな反論が予想されるか」などを加筆していくのです。もちろん、それだけでは「小論文」にはなりません。「小論文」にするためには、全体の構成や各文の表現を意識する必要があります。しかし、そうやって骨子(要点)に肉付けすることで、どのようにして文章を膨らませていくのかが体得できるのです。全体の構成や各文の表現などについては、国語や小論文の講座で学習していきましょう。そうして、「自分の文章」を創り上げていってください。
文章が書けたら、そのままにせず、必ず添削してもらいましょう。@will講座の答案添削を利用することをお勧めします。